この想い、春風に乗って

春の終わり、優しい風が桜の花びらを連れていく。 高校の卒業式から一か月後、私は、あの日のことを思い出しながら、ひとりで坂道を上っていた。 その坂の上には、古びたベンチと、街を一望できる見晴らしのいい公園がある。 そこは、私と奏多がいつも放課後に待ち合わせていた場所だった。 「大学、楽しい?」 問いかける相手は、もういない。 奏多は、去年の秋に病気で亡くなった。
ねこわさび
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気まぐれ投稿。