おなじ話

 露出した皮膚にまるで蔦の蔓のように絡みつく心持ち悪い地下鉄の生温い空気を断ち切るように地上へと足を運ぶ。いつも長く感じる短い階段を疲れ切ってしまった身体を引きずりながら登ってゆく。登り切った階段の先にはコンビニが待ち構えている。迷わず店舗に入り今晩の2人分の晩酌に用いるビールを購める。  室内が明るく照らされていた頃より扉が重いような感覚を未だに拭えないまま鍵穴に鍵を差し込む。鍵を回してその重くもないはずの重い扉を開ける。  いつも玄関に出迎えに来てくれる君へ声をかけるが当然返答はない。靴を脱ぎ真っ直ぐに君がいるかもしれない寝室へ急ぐのだがそこに君の姿はない。写真の君とビールを酌み交わしながらその日を思い返すのが最近では日課になっている。  ある日、他愛もない出来事を話しているうちに君にどうしても会って話したくなり 「どこにいるの?」と思わず呟いていた。 「ここいるよ。」  いつかの誕生日に贈った水色のワンピースを纏った君は気に入っていた窓のそばで一人あやとりをしている。  「何してんの?」 「なんにもしてないけど?」
ハヤト