第六章

第六章
 その夜、ハルキとルカは夕食に、ハルキの獲ってきた鹿肉のステーキを食べることになった。なのだけれど、いつも通りにいい感じに焼けた肉塊に齧りつくハルキとは対照的に、ルカは一向に目の前の皿に盛り付けられた鹿肉のステーキに手をつけようとはしなかった。 「なんだよ、食わないのか?」  ルカが黙ったまま、不意義そうにステーキの乗った皿を眺めたり、また時々ハルキの旺盛な肉の咀嚼する様子をちらりと見やる動作をただ奇妙に感じながらーーとはいっても、彼女はその他に盛り付けられている野菜のサラダや以前に食べさせて貰ったコンソメ仕立てのスープ等には流石に手を付けてそれらを進んで食していたのではあるけれどもーーハルキは、自分の狩猟した肉を使った手料理が、もしかすれば彼女の興味に沿ぐわなかったのだろうか、と少し残念そうにそんなルカの佇まいに目を向けた。 「獲れたての鹿肉だぜ。新鮮だし、美味いぞ。なんてったって、街ん中で売られているヤツなんかとは全然違う、それこそ無添加無科学の自然そのままの味だからな。それに、俺の手づくりでもある」  しかし、そんな風に語ってみても、ルカはやはり一度として、その鹿肉の料理に指先ひとつでも触れようとはしなかったし、何なら、それどころか、その料理を訝しげにさえ見ているようで、どこか視界の外に敬遠したがっているような姿にも、彼女の態度は見受けられていたのだった。 「なんだよ、俺の料理が気に入らなかったってのか?」  ふん、とハルキが少し不機嫌そうに面白無さげに鼻を鳴らすと、ルカは誤解だというように首を横に大きく振った。 「じゃあ、なんで食わねえんだよ」  ハルキが食べる手を止めて、しばらくルカの反応を眺めて、彼女の表情を確かめていたのだけれども、ルカはそんな不思議そうなハルキを、やはり同じように不思議そうに、そして不可解そうに眺め返すばかりで、一向に何か答えを返す様子は見せることがなかったのだった。 「……わかったよ、そんなに食いたくねえんなら、俺に寄越せ」
旭川黒介
旭川黒介
小説はジャンル問わず好きです。趣味は雑多系の猫好きリリッカー(=・ω・`)☆