愛文

星を目指して走った。いつか辿り着くと自分に言い聞かせて、拳を空に振り上げた。 でも今は違う。 貴女を目指して走っている。 「諦めろ」 幾度も言われました。貴女を牛蛙から取り戻す事は、鬼から金棒を取り上げるよりも難しいと。 その度に思い出しました。山査子のような香りを。あなたから漂うそれは甘くて、それでもどこか辛くて。優しいくせに僕の頬に付いた泥を拭いてくれるだけなのです。 さすがにもう、光都に着いたでしょうか。その名の通り、万物が輝きを取り戻す理想の都市。
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