メトロノーム①

メトロノーム①
 明石 灯(あかし ともり)は、幼い頃からピアノやギター、木琴など様々な楽器に慣れ親しんできた。  三歳の誕生日には子供用の小さなピアノが贈られたし、ギターのコードネームも複雑な指の動きもマスターした。初心者でも扱いやすい木琴の弾き方も、様になっていた。調律の方法だってすぐに身につけた。  ストリートピアノには何人もの人が立ち止まって、彼女の演奏に惹かれていた。コンクールではいつも一位だった。  気付けば、灯は音楽好きの少女に育っていた。「楽器に囲まれて暮らしたい」と思う程に、その想いは強くなった。  若くして開花したその才能に誰もが陶酔し、好み、アンコールを求め、羨み、そして妬んだ。  次第に、彼女に向けられる眼差しのほとんどが嫉妬に変わっていった。  「お前は下手だ」  「調子に乗るなよ」  「お前に才能はない」  「上手いフリしても無駄だ」
白羽 唯
白羽 唯
ファンタジー小説を主に制作する、小説作家志望です。 まだまだ文章が下手&Novelee初心者なので、温かい目で見てもらえると嬉しいです! 誠に申し訳ないのですが、都合により不定期投稿になります。すみません。