マヨコーンパン

 母が他界した。     物心がつく前に離婚し、女手一つで育ててくれた母。  記憶の中の彼女は、私なんかより仕事仕事という人だったから、訃報を聞いても涙ひとつ出てこなかった。  通夜も葬儀も何もかもが、滞りなく終わっていく。  私はというと、その時ですら泣かず、夢を見ているような不思議な感覚に陥りながら頭の中を駆け巡る淡い思い出たちにただ身を委ねていた。  授業参観も運動会も、休日の遊園地も、約束という約束を守られた試しがなかった。誕生日すら祝われなかった。そんな思い出。  兎角、思い出の中の私は独りぼっちで寂しかったのだ。
おかゆ
おかゆ
普段はTwitterにて、140字以内のお話を1日1作品以上呟いています。