最高で贅沢な罰を
何も変わらないままで居て欲しい。本気でそう思ったんだ。キミだけは───。
今からこれを読むキミへ。この話は幻想でも現実でも無い、ワタシの思想だ。
平成十八年 七月二十九日
ワタシは生まれた。「灯」と書いてあかりと読む。ワタシはこの名が気に入っている。父と母、千夏お兄ちゃんはあかり、双子の兄はかりんと、幼馴染のアイツはかーりーと、それぞれ皆違うふうにワタシを呼ぶ。ワタシはきっと暖かな家庭で平穏な日々を過ごしていた。
六年後、妹が生まれた。「陽菜乃」という。ワタシは六人家族だ。
幼少期の記憶は全くと言って良い程無い。あるとしたら千夏お兄ちゃん……‘せん’の事が好きなあまり、幼稚園バスに乗ると泣いていたことかな。今となっては恥ずかしい。ワタシは小学生一年生になり双子の兄、海斗と幼馴染の優真と三人仲良く同じ小学校に入学した。ワタシだけ違うクラスだったが、登下校は三人一緒だった。そのまま二年、三年へと学年が上がり、中学校へ入る頃にはワタシは二人とは一緒にいなくなった。嫌いになったわけではない、喧嘩をしたわけでもない。ただなんとなく自然に離れていったのだ。ワタシも女の子の友達といる方が楽しかったし向こうもそれは同じだっただろう。小学二年生から二人はサッカーを習っていた。
中学校での部活動は、案の定二人はサッカー部。ワタシはバスケットボール部に入部した。ワタシは運動神経が良いわけでは無いのでスタメンに選ばれることは少なかった。海斗と優真は運動神経が優れていて、特に海斗は一年の時からレギュラー入りしていた。ワタシも何度か二人の試合を観たことがある。素人にも分かるくらい二人は上手い。そんな二人を好きな人はとても多かった。海斗も優真も運動神経が良いだけでなく、頭も良い。常に学年の上位五位以内には名前が入っている。そんな二人の事を皆はこう呼んだ‘天才’だ、と。誰も二人の事を努力家だとは言わない。ワタシは知っている。海斗がサッカーから帰ってきた後に勉強しているのを。分からない問題をワタシに聞いて、理解するまで何度も何度も繰り返し解いていることを。夜遅くまでランニングをしていることを。海斗は天才では無い。秀才だ。それを知っているのはワタシと千だけ。
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2024/1/6 18:10
あかり