天使の骨 最終話
僕は手伝い初日から四日目の朝までを高熱でうなされ寝込んでいたのだそうだ。僕の看病をしてくれていた研究員兼医療スタッフの森山さんが教えてくれた。施設に着いて、叔父と話をして別れたあと、自分の部屋で横になった以降の記憶が全くなかった。うなされたらしいことすら覚えがなかった。
熱が引いてからはすぐに手伝いを始めた。滞在の予定は一週間だったので、つまりは三日間を無駄にしたのもあって、残りの時間は生物が映し出されているモニターを凝視し続けることに費やした。森山さんに、そんなに根を詰めたらまた熱を出すぞ。圧迫されるのは俺なんだ。と釘を刺されたが、当然に無視して画面を見つめた。やはり動く生物が観察していて面白かったが、動かない植物や鉱物、視覚的に認識できないものでも、その神秘に浪漫を感じて飽きることはなかった。
観察していて浮かんだいくつかの疑問を、残っている研究員の人たちに質問した。
「この目に見えない熊というのはどうやって捕まえたんですか」
「それはですね、この熊と何らかの関連性が認められたその地帯、空間ですね、をまるごと切り取るように採取して部屋に収容したんですよ。熊が付いてくるかは確実ではなかったのですが、奇妙な生き物たちです、特性も行動も人智を超えたところにあります。どれだけ考えたって無駄なので、大胆な決断が求められるのです。この事例は成功例ですよ」
他の人にはこんなことを聞いた。
「どうして海の人類の罪人が収容されているんですか」
「ううん、その話は厄介だから説明したかないんだがなぁ。まあ良い。一回しか説明しねぇぞ。海の人類を発見した俺らは、海の人類を研究したいがために、武力で脅したんだ。
武力でビビらせながら、海の人類側から何人かを引き渡す条件を無理に押し付け、海の人類の言語も解析して、俺ら優位な話し合いのもと協議を重ねた。海の人類は身内で揉めたあと、死刑制度がなく扱いに困っていた罪人を渡すことを決定した。そういうことさ。俺は反対してたんだがな…」
彼は話し終えると決まりの悪そうな顔をして足早に去ってしまった。
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カテゴリー: SF
投稿日時: 2024/10/22 8:35
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
山口夏人(やまぐちなつひと)
好きな作品
「K君の昇天」梶井基次郎
「中世に於ける一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜萃」三島由紀夫
「狐媚記」澁澤龍彦
「阿修羅花伝」赤江瀑
「芽むしり仔撃ち」大江健三郎
「ぬばたまの」須永朝彦
「火星植物園」中井英夫
「半島を出よ」村上龍
「トビアス」山尾悠子
「獣の奏者」上橋菜穂子
「有頂天家族」森見登美彦
「宝石の国」市川春子
2005年6月11日生
ある文学賞に応募したけど、箸にも棒にもかからなかった作品を挙げてます。