第五話「少しだけ忘れよっか」
放課後の保健室。
夕方の光がカーテン越しに差し込んで、室内は静かだった。
小花はベッドの上で毛布にくるまりながら、ぼんやりと天井を見ていた。熱のせいか、身体も頭もだるい。
その横で吉田先生は、いつも通りタバコをくわえながら窓辺に立っていた。
「先生は……知ってますか?」
小花が静かに口を開いた。
吉田先生は振り返りもせず、手元のタバコを見つめたまま応える。
「なんだ、花子。もう寝てたほうがいいぞ。そろそろ中間テストだろ?」
「……それより、先生。前から言おうと思ってたんですけど、学校でタバコ吸うのって、どうかと思いますよ。しかも病人の前で」
小花の言葉に、吉田先生は仕方なさそうに肩をすくめ、タバコをポケットに戻す。
「それを言うなら、花子。お前、頑張りすぎだよ」
風が窓から吹き込み、カーテンがふわりと揺れる。
吉田先生の顔が一瞬、影に隠れた。
「詰めすぎるのは良くない。しんどくなるだけだぞ」
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2025/6/22 2:50
にゃの桜
本が好きで自分でも小説を書けるかなと思いアプリを入れました!
上手な事関係なく、楽しくやって行けたらと思っています!