第五話「少しだけ忘れよっか」

第五話「少しだけ忘れよっか」
放課後の保健室。
夕方の光がカーテン越しに差し込んで、室内は静かだった。 小花はベッドの上で毛布にくるまりながら、ぼんやりと天井を見ていた。熱のせいか、身体も頭もだるい。
その横で吉田先生は、いつも通りタバコをくわえながら窓辺に立っていた。 「先生は……知ってますか?」 小花が静かに口を開いた。
吉田先生は振り返りもせず、手元のタバコを見つめたまま応える。 「なんだ、花子。もう寝てたほうがいいぞ。そろそろ中間テストだろ?」 「……それより、先生。前から言おうと思ってたんですけど、学校でタバコ吸うのって、どうかと思いますよ。しかも病人の前で」 小花の言葉に、吉田先生は仕方なさそうに肩をすくめ、タバコをポケットに戻す。 「それを言うなら、花子。お前、頑張りすぎだよ」 風が窓から吹き込み、カーテンがふわりと揺れる。
吉田先生の顔が一瞬、影に隠れた。 「詰めすぎるのは良くない。しんどくなるだけだぞ」
にゃの桜
にゃの桜
本が好きで自分でも小説を書けるかなと思いアプリを入れました! 上手な事関係なく、楽しくやって行けたらと思っています!