第五話 霊感

「その子、誰?」 隣の席の鈴木さんは、俺の背後に取り憑くホロ子さんを指差してそう言った。 俺はわざとらしく背後を振り返る。 「誰って、同じクラスの中山さんじゃないか」 適当に後ろにいたクラスメイトの名前を出してみる。 「違う違う。神谷くんの後ろにいる、その透けてる彼女のこと」 チラリとホロ子さんの方を見てみると、それはそれは焦った表情をしていた。 「鈴木さん、もしかして見えてる?」 「うん。『教習中』って?」 そこまで言われて、俺は諦めた。彼女は"視える"側だったのだ。
吉口一人
吉口一人