しゃべる思い出

「ここ、ぼくの秘密の場所なんだ」
「わぁ、素敵ね」 
 海沿いの公園で、二人はベンチに座っていた。海面をはさんで向こう側には、高層ビル群のイルミネーションが見える。
 湿った潮風が由美子の髪を揺らし、茂の鼻先を吹き抜けていった。
「由美子さん」
 茂は汗ばんだ手のひらを握りしめて言った。
「は、はい」
 由美子も緊張している。
「ぼ、ぼくと・・・」
 そのとき茂の耳から甲高い声が漏れてきた。
「懐かしいなぁ。結婚詐欺やってたとき以来だから、7年ぶりか。どんな女でも、この夜景を見せるだけで簡単に落とせたなあ。あいつら元気かな、おれのことなんか忘れて頑張って生きてほしいよ。ナッハッハ」
 茂の顔から血の気が引いた。
「違うんだ、こんなのデタラメだ! いや、デタラメじゃないけど、僕は心を入れ替えて本当に君のことを・・・」
 すると、また違う甲高い声が聴こえてきた。
「ここ懐かしいなぁ。私が殺した元夫たち、まだそこに沈んでいるかしら」
中野水
中野水
昨日、近所を歩いていると「お前、中野だよな?」そんな風に声をかけられた。なのでその晩、カツ丼を食し、空のどんぶりを外へ置いてみた。翌朝見てみると、どんぶりと蓋の間に挟まったマサシが「侍!侍!」そう連呼している。だって僕はコーラが好きなのに。 はあ? よろしくお願いします。