凪
猫は水が苦手だというが、マロンは泳ぐことが好きだと思う。私はマロンではないからその気持ちは分からないけれど、海に入ることすらあるのだからきっと好きなんだろう。
「マロン」
二人乗れば窮屈になる小さなボートは、波に合わせて心地よく揺れる。乗客は私一人。船長は猫のマロン。
丘のような岩場を散歩していたマロンは声に反応してこちらを見る。水飛沫をあげて海へ飛び込みこちらへやってくる。猫のくせに犬かきのうまい変なやつだ。
岩場から少し離れたボートまで泳いでくる。私はマロンを両手で抱えるように持ち上げると、真水で海水を丁寧に洗い流す。マロンはされるがままで、目を瞑り微動だにしない。
白の体にいくつか栗色の斑点がある。海で見つけた子猫に山の名前はどうかと思ったが、今では気に入っている。マロンもそう思っているはずだ。
タオルで軽く水気を拭き取ると、マロンは毛繕いを始める。小さな舌先で栗色の斑点を舐める様子をじっと見ていた。
「帰ろっか」
マロンは小さく鳴き、船頭に立った。水平線を眺める姿は凛々しく、帰路なのが残念に思えた。
港に着き、レンタルのおじさんに挨拶をする。ボートを返し、マロンはケージの中。港から家までは一本道で、道中には潮の匂いが漂う。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2026/8/18 12:07
K
色々書いています。