これは誰の物語か

これは誰の物語か
煤色の路地、濁りを混じえた水溜まりは静かにそこに存在している。そして、その静寂は破壊された。荒い呼吸、不格好な姿勢で、必死に進む女の腕には、一人の赤子が抱えられている。抱え走る女の瞳は、未だ輝きを失っていない。まるで、その先に大きな希望でもある様に。あるいは、その希望を託す様に。 光の中に影が二つ、無情にもそれは女を捉えた。残酷な運命に逆らう術は無く、女の弱い灯火は、影を照らすに値しない。だが、決してそれはここで潰えるものでは無かった。 倒れる女の腕の中に、あの赤子は居ない。 ─ これはこの女の物語だ。 降りしきる雨の中、ある男を見下ろしていた。やけに雨音がうるさいので、つい耳を塞ぎそうになってしまう。しかし、塞ごうとする手の中には、拳銃が。そう、拳銃。雨のうるささが、私の思考を掻き乱す。あぁもう、うるさいな。うるさい… うるさい─ うるさい─ うるさい─ 拳銃に、一筋の雫が伝っていく。 うるさい─ うるさい─ うるさい─ うるさい─
じゃらねっこ
じゃらねっこ
ねこじゃらしが好きなので、じゃらねっこです。