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世界が終わった。
ヒビが入った倒壊寸前のビル。そのビルとビルの間の通り。アスファルトの割れ目に生える雑草。主をなくして道路いっぱいに佇む車。元々都心だったのであろうが、今は人の気配どころか雑草以外の生き物の気配さえしない。ノスタルジックな絵としてネットに上がってる画像で見たことあるような光景だった。その画像の中で呆然として男が一人立ち尽くしている。驚きでしばらく出なかった声を絞って、
「なんだこれは…。」
日差しが入らなく、薄暗くなっていたからであろうか、ビルとビルの間に見える青空の青さが際立っている。
一章
「…何が起きてんだ…」
彼、遠野ハスミは長い呆然の後、言葉をやっと紡ぎ出した。さっきまで目にしていた、なんの変わりない通学途中の電車内の光景と、今目にしている廃墟群との光景の繋がりが説明できない。一度冷静になってしばらく考えてみた結果、いわゆるテレポートや異世界召喚という単語を思い出した。この点を思いつく速さは異世界召喚やら瞬間移動というSFチックな単語によく馴染んでいる現代人だからであろう。実際、元いた世界では彼はそういう異世界召喚もののアニメをかなり見てきた、そしてその異世界召喚ということに憧れてきた数あるうちの一人である。しかし、今回はそれとは違うみたいだ。廃墟ビル、佇む車のナンバープレート、道端に落ちてる空き缶。全て、ここがハスミの知っている世界であり、その末路であることを表している。つまり、
「タイムスリップ…ってことか…」
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カテゴリー: SF
投稿日時: 2022/7/17 11:41
最終編集日時: 2022/7/19 6:22
Lokonik