短編小説 ウエディング、ヘル。【前編】

短編小説 ウエディング、ヘル。【前編】
南の島の結婚披露宴は本土とは違い、独特な慣習がある。  先ずは、招待客の人数が三〇〇人から五〇〇人が通例で、新郎新婦のひな壇の側には両家の両親をはじめ兄弟や親族のテーブルが並ぶ。  それと、兄弟と親族、友人たちの余興の数も多い。その分、宴は長時間にわたるのだ。    つまり、披露宴の始まりは、余興からが始まると言っても過言ではない。  実際に、新郎新婦が好むウエディングソングと共に光を浴びながら入場し、周辺の暗がりからシャッター音や輝かしい無数の刹那な光にも囲まれて練り歩く。ひな壇に着き、主役たちの紹介、来賓挨拶、乾杯の音頭が取られ、その二人が椅子に腰掛けると、三線の音色が会場を包み込む。舞台の両袖からは、かぎやで風を舞う踊り手が現れる。南の島での祝い事に欠かせない舞である。披露宴での最初の余興で、琉舞を身につけた親族、若しくは、師範免許を持つ舞踊家に依頼し、その神聖な舞から宴が始まるのだ。     「あい、主任まで練習にきてるんですか、お疲れ様です、これ、みんなで呑んでくださいねぇ」  
H.K
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