古典JKの恋

古典JKの恋
昔から身分に合う恋をするのが良いといいます。 あふなあふな思いはすべしなぞへなくたかきいやしき苦しかりけり 昔に身分違いの恋に悶える男が詠んだ歌である。その実私も似合わない恋をしている。意識するまではなんとも思っていなかったのに、今では過敏になってしまう。その人に自然と目がいく。この胸が踊る感覚や世界の終わりみたいな絶望感のサーフィンが退屈な日々を魔法みたいに変えてくれる。 でも、恋してはならない相手だった。きっかけは多分フォークダンスだろう。よくあるような事だろう。手と手を強制的に握るものだから、我ながら単細胞すぎて馬鹿らしい。私は長身なのだが彼はそれよりも高く、やはり良いと思う。学校の大体の男子は私と同じくらいか低いくらいで、視線を見上げる事に新鮮さを感じる。他の魅力は声の低さだろうか。聞いていて心地いい低音が頭の中で響く時こそ幸せだ。そんなこんなで毎日を過ごしていたのだが、ある噂を耳にした。 彼は同じクラスの人と付き合っているというのだ。本当なのか分からないがかなり真実らしいのだ。何故少しいいなー…と気になっていた人に限ってお付き合いをしているのか。しかもお相手様は去年に違う人と付き合っていたという事も聞いている。不思議な気持ちになってしまった。まだ恋とはっきり言っていい気持かも自覚しておらず、混乱の極みであった。それから私は前に慕っていた子に思いを馳せた。その子とは受験を機に別れてしまい、全く会えないのだが。短髪でさっぱりとした人であった。普段は無表情で何を考えているのか分からない所が見受けられた。しかしそれを考える事が楽しみ、そして刹那に綻ぶ笑みこそが最高なのであった。だが私は臆病なので、それは恋ではないと決めつけて気丈に日々を過ごしていた。避けれない別れが来て、少し経ってからようやく、もう少し近づきたかったという本望がとどめなく溢れてくるのだ。 現在、どうしようもない場所で宙ぶらりんである。側から見れば滑稽極まりない。悶え死ぬと言う言葉を先人が作ったことに感謝したい。このような感情は言葉にでもしない限り本当に精神が参ってしまいそうになるのだ。物語の恋はここで親身で恋愛上級者の友人や場を揺り動かすハプニングが起こるようなものだ。だが現実は自分から動かねば誰も物語のページを捲ってくれはしないのだ。私はギリギリの範疇の努力を最近してみた。学園祭の演劇に出ると言う決断だ。そうは行っても彼は主役を務めるが、私は接点がない最初に一度しか出てこない脇役だ。それでも行動できたことによかったと思っている。
倚吏
倚吏
倚吏(より)です よろしくお願いします 受験期を無事終えてゆっくり執筆を再開中。