犬のように、飢えさせて
LINEの文字をみた、酷くひどい男の名前が並ぶ。渇いた喉、それでも下唇の瘡蓋はぽちゃんとすら言わず。飲みかけの特茶とやら、おれの脂肪を燃やしてはくれないだろう。ああ、せめて、魂まで焚べてくれ。
おれの兄貴の子どもが、病気になった。まるまる太った顔の腫れ具合は、おれの知る人の顔じゃない。ステロイドが、痛々しい、カテーテル。兄貴の子どもは、首から管がぶらんしていた。
不幸だろう、金が必要だと言われた。都合のいい話をすれば、渡したくもなかった。自分は十年も昔に百万も、二百万も借りたというのに。そいつは、結局、おれのマイルドセブンにベットされて消えて。燻る、罪悪感。自己犠牲すら冷たさを帯びて、金を借りる時に思った情けなさは夢すら与えた。これでやり直そう、これで真っ当に。しわくちゃだらけの茶封筒、この時代じゃりそなの緑の封筒。青いラインに、おれの股間はうんともすんとも言わない。
最後に行った風俗は、おれより下の女の子で、萎えた。
兄貴が、インターフォンを鳴らす。返した金、数年に一度の連絡。仲は悪くない、だが、言葉の節にある無邪気な頃のあの夏休みはとうに過ぎ去って。虫かごの重さよりも、頭を掠める預金残高。金が、おれと兄貴の間に、貸し借りの関係を産んで、それはやがて繭から。ほつれた糸の先に、他人事のような上辺の言葉が並んだ。
"最近、どうだ?食えてるか、体調気をつけろよ"
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カテゴリー: 詩・短歌
投稿日時: 2025/10/28 13:40
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
西崎 静
コツコツ書いていきたいと思っております。よろしくお願いします!成済