惰性以上、情熱以下 ⑧

惰性以上、情熱以下 ⑧
 カチャカチャと食器を洗う音と薄っすら柔軟剤の香りがする。 カーテンを開けられた窓からの光が眩しくて片目しか開けられない目でスマホを見ると、am6:28。 6時半にセットしたスマホのアラームを鳴る前に解除する。布団の中で一伸びして起きて、キッチンに立つ彼女の元に行き、後ろから抱きつこうとして拒否られる……。 俺の朝は、こんな感じで始まる。  彼女の家に転がり込んで一週間。 正直、丸一週間経った今でも何も進展なんてしてない。 徹底して同棲ではなく同居のスタンスは変わらない。 一つ変わった事と言えば、彼女が俺に対して敬語ではなくタメ口になった事くらいだ。 大して広い部屋でもないのに、俺は彼女の下着姿すら見た事がない。強いて言えば、ロフトが憎い。あのロフトさえなければ彼女に触れられるチャンスは、もっと俺にもあるはずだと思っている。
DORRY
DORRY
思いつきのストーリーを書いています。記録用でもあります。 恋愛、BL、家族、友情、テーマはいろいろです。