春の戯れ

春の戯れ
 四天王寺の境内には、春の風が舞い、桜が満開だった。陽の光が花びらを透かし、枝の間からこぼれ落ちるように地面を照らしている。まるで夢の中の景色のようだ、と一平は思った。 「おい、一平、そんな難しい顔してると、桜も逃げるで」  そう言ったのは、友人の田島だった。小柄で、いかにも小狡そうな目つきをしている。だが、金にも女にも不自由しないという噂だった。  一平は煙草をくわえながら、桜の下に腰をおろした。人々は酒を酌み交わし、笑い声が響いている。着物姿の女たちが、色とりどりの帯を翻して歩いていた。 「お前、女と縁がないくせに、桜見て何考えとるんや?」
青天目 翠
青天目 翠
なばため すい