コールド

コールド
 十六歳の冬の夜。僕は冷たい風を切り、冷えた顔に時折手をあてながら塾に向かっていたと思う。  その手には分厚い手袋がはめられていて、耳あてに覆われた耳にはイヤホンが。  マルーン5のコールドを聴きながらプラットフォームで電車を待つ僕は、この世界で一番イケていた。  僕はイントロから吸い込まれ、その瞬間世界の主人公になった。  ああ、なんて良い人生なんだ。切なくて哀愁漂う、でも輝いてる自分。
あや