拾う者の正体

拾う者の正体
『よお、生きてるか』 頭に直接響くような奇妙な声に重いまぶたを上げると、真っ黒なスーツ姿の男がしゃがんでいた。身体中がひどく痛む。 「ああ…死んじゃいないさ…」 『ひどい姿だな。神に見放された聖職者よ。俺で良けりゃあ話を聞くぜ』 「遠慮しておくよ…。私は…聖職者だからな」 『はっ。まだ神を信じてんのか?腐った他の神父共にボコボコにされて、こんなところに転がされてんのに助けてもくれない神サマを?』 黒スーツの男は呆れたように笑った。ああ、そうだ。彼が言うように、私は同じ教会の神父の汚職を目撃してしまったがために殴られ蹴られ、今は町外れに放置されている。このままでは死ぬのも時間の問題だろう。それでも私の神への信仰が無くなるはずもない。 「そうだな…。だが神は助けて下さるさ。君が現れたようにな」 『俺は神サマじゃねえし、あいつの思う通りに動いてやる気もねえ。死にかけのお前を助ける義理もねえが、お前だって気付いてるだろう?』 気付いていた。彼は人ではない。薄暗い中でもギラギラと光っている赤い瞳を見れば一目瞭然だった。朦朧としてきた意識をぎりぎりで保ちながら私は答えた。
白本竜也
白本竜也
短編を書いてます。 Twitterでは140字小説を主に色々と。 よろしくお願いいたします。 Twitter: @shiramoto_140