熱を帯びる赤い瞳

 巨人たちの追跡は瓦礫の隙間を走る鼠一匹見逃さない。だがガルダの逃走術と潜伏技術は更に上手を行っていた。米国特殊部隊が使用する装備の特徴を把握しているからだ。  二人は巨人たちの死角を通り、レーダーを攪乱する囮を設置しながら移動する。  ガルダの作戦は功を奏した。巨人たちは標的を完全に見失い、苛立ちのあまり地団駄を踏んだ。 「もうすぐ合流地点だが……気を抜くなよ」  ガルダの忠告を聞いていたにも関わらず、ダルタンは先行する彼女の背中に潜めた声で話しかける。 「助けてくれたことには感謝します。でも、僕は貴女に従うわけじゃない。リアラを助けるために行動を共にするだけです。もし、リアラを見捨てるようなことになれば、僕は相応の行動を取ります。リアラの命を最優先に……」  続く言葉は嗚咽で途切れた。ダルタンの異変に気づいて、ガルダは振り向く。 「ごめん、リアラ……僕が弱いばかりに、あんな、あんなことに……」  ダルタンのか細い声が次第に大きくなっていって、やがては大粒の涙が頬を伝い、話し声は泣き声に変わった。  瞬間、ガルダはダルタンの口を左手で塞ぎ、右手を彼の後頭部に回す。
アバディーン・アンガス@創作アカ
ローファンタジーや一風変わった雰囲気の作品が大好物。 主にダークファンタジーとかサイバーパンクとか、好きな要素をごった煮した作品を鋭意執筆中です。 「好きじゃないけど面白い」と言われる作品を目指しています。 合間に書いた短編を気ままに投稿していく予定です。