明くる夏の日
私が君の姿を遠くに見つけたのは、駅に降りて間もないときのことだった。私がプラットフォームに降り立ち、蝉の騒がしい鳴き声と、皮膚を灼きつくすかのような日光に包まれたとき、ホームの端から端まで連なる車両たちの、さらにその奥で、私は君らしきシルエットを認めた。シルエット。リュックサックを右肩にかけ、しばらくその姿勢のまま怠そうに歩いてくるそのシルエットは、君が電車から降りてくるときの大抵の癖らしかった。だから、私は君の顔がよく見えない内にも、それが君だと理解し得たのである。
それでも、私がそれを目にしていたのはほんの少しの間だけだった。君が一瞬立ち止まって、左肩にリュックサックの紐をやっと通したときには、私は、すでに他の学生に混じりながら改札の方へと歩みを進めていた。しかし、歩みを進めると言っても、私はそれを他の学生たちより幾分か不自由に、或いは、後ろから歩いてくる君がちょうど追いついてくる時機に合わせて、まるで鞄の中の何かを探しているふりをしながら、ゆっくりゆっくり歩いて行ったのである。
「何か忘れた?」
私は、そうやって掛けられた声が私の期待通りだったことに安心して、また、これから進めるべきいくつかの台本の中身を確認して、徒らに振り返った。
「ぃやぁ、別に。
読んでた本を仕舞おうと思って。」
「そうなの、何読んでたの?」
「あの、芥川の『蜃気楼』って分かる?
『続 海のほとり』と言ったりもするんだけど、
あの、あれ、夏休みの課題で読書課題があるでしょ、
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2026/8/21 14:51
道徳的な山羊
「後川」だった者です。17歳の若造です。「カクヨム」での投稿も始めました。
第七回N−1 12位 435点
第八回N-1 9位 318点
第九回N-1 8位 489点
King of Novelee vol.3 5位