Fusion

肘から下の神経を慎重に繋ぎ合わせると銀色の5本の指は自分の意志と反する事なく動かすことができた。 但し料金を安く済ませるため肌色の皮膚や熱い冷たいなどの不用な感覚や見た目の問題は無視することにした。 代わりと言ってはなんだが握力は200kgまで握ることができ硬質な素材でできているため拳を叩き込めば木材ぐらいは粉々に粉砕することができる。 少し前までは人間と同じような動きができるAIロボットを低コストで量産することを目標にしていたが、技術の著しい向上により、人間とAIを融合する方が合理的でありその他の問題例えばAIに人間が仕事を奪われるというような心配はいらなくなった。 そして私のように体の部位なども少しずつ機械化して行く方が合理的であるという考え方が浸透してきている。 結局、人間であるということは自分が自分であると認識できるかどうかということだったのかもしれない。 いくら感情というものがあっても他人と自分の区別がつかないようでは話しにならないからだ。 昔はロボットというと空を飛べたり指からミサイルを発射することまで想像されていたが実際にはそんな必要は全くなく人間が生活する上で何かを選択する時にその解決策をいくつか自分で考える訳だがその際のどの案が最善かAIが示してくれればいいだけなのだ。 人間はいくら年月を経て体験する事で得た事柄を少しずつ忘れてしまうが、AIと融合する事で映像としてもデータ蓄積ができるのだ。
新規ユーザー