月を仰いで 二作

月を仰いで 二作
「月が綺麗ですね」  あまりにも見事な満月だったから、文豪気取りに口にしてみた。  隣の彼女はというと、ついと顔を逸らして「ひどいひと」と返してきた。  ハッキリ言わないのが日本の風情と呼ばれるものの、時には厄介なものだ。  俺は彼女に一歩近づきながら、耳元に口を寄せた。  「お前と一緒だからだよ」 タイトル:「月に嫉妬するお前がかわいい」 20240913
湯呑
湯呑
読み専にて登録しましたが、作品投稿もします。 ジョージ・オーウェル氏の名著と同年の年長組。