プロローグ*番外編*『一日を宝に』
彼女——柊光希〈ひいらぎ みつき〉さんは、教室の片隅で静かに本を読んでいた。その表情はどこか遠くを見つめているようで、周囲の喧騒とはまるで無縁の世界にいるようだ。
俺にとって、その瞬間は時間が止まったかのように感じられる。〝あの日〟から光希さんの存在に惹かれ、心臓が高鳴る。どうにかして話をしたい、そんな思いが胸の中で渦巻いていた。
だが、光希さんに近づく勇気が出ない。
しかし「今日こそは」と声をかける決意を固め、近づく。何度も光希さんの方を見つめ、勇気を出して声をかけようとするも、口を開く前に何度もためらってしまう。
光希さんは本に夢中で、俺のことも周囲の騒がしさも全く気にしていない様子だった。
(やっぱり、声をかけるのはやめようかな……)
そう思いながらも「頑張れ」と自分に言い聞かせて立ち上がり、光希さんのもとに近づき、軽く咳払いをしてから声をかけた。
「すみません、何を読んでいるんですか?」
光希さんは驚いた表情を浮かべ、俺を見上げた。紫水晶のように澄んだ瞳も、ふわりと揺れる亜麻色の髪も美しい。
「あ、これは」
1
閲覧数: 30
文字数: 881
カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2025/4/2 9:23
最終編集日時: 2025/4/4 10:31
アヤっちゅ
思いついたら書く精神なので、頻繁に投稿するわけではありません。人間より動物や虫が主役のストーリーが好きなので、そういったものを書こうと思います。
令和7年4月5日:追記「なんだか人間がメインの小説も書きたくなったので、人間と動物がテーマの小説を書いていきます」