本を食す虫

世界が滅んだ。本だけがこの世の中で好きだったから特に困らなかった。図書館に入り浸って、保存食をたまに詰め込んで、また文字を読み耽って。一つ問題なのは私の読んだ本を片っ端から食べる虫がいること。生憎私は何千年何万年何億年後の人類の発展には興味がなかったし、これだけ大量の本があるのに同じ本を繰り返し読むだなんてそんなアホらしいことはしたくなかったから、問題はなかった。だからこの虫が私に飛びついて来ない限りは潰さないつもりだったし、むしろ私はこの虫に対して愛着をもっていた。だからこいつのことを親しみを込めて「相棒」と呼ぶことにした。 出会ってから3年後、たしかに相棒の数ミリ程度しかなかった体は、直径10cm程度にまで大きくなっていた。どれぐらいの本を読んだかなんて最初の一週間で数えるのをやめてしまったおかげで、この大きさがおかしいのか当たり前なのかがわからない。排泄をしている様子がなかったから私の人生が全てたった10cm程度しかない虫に詰まっているのだ。おかしな話である。成長した比率を考えるととんでもなく思えるが、たかが10cmである。ギリギリ掌に乗る。私の人生は、拍手一つすれば潰せる生物とイコールなのだ。パンと一つ鳴らせば、私の人生もまたパンと弾け死ぬのだ。個人とは他人をもってして確立できる。私が死ぬのは私の寿命が尽きたときではない。この得体のしれぬ虫が私の目の前から消え去ったときなのだ。
寝た倉庫
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中身X@samugari_human 人気あったらシナリオ化するかも