イカロスの翼
エーゲ海に面した小さな村では、夏至の頃、毎年恒例の祭りが開かれた。
その祭りの目玉は「鳥人の競べ」 若者たちが自作の翼を背に、断崖から海へ飛び立つ競技である。観衆は歓声と笑いを抱え、空を舞う者たちを見守った。
その年、注目を集めたのは二人の青年だった。
ひとりは、村一番の職人の息子で、父ダイダロスの知恵を受け継ぎ、木や布を巧みに組み、羽根を骨組みに沿って貼りつけた。蜜蝋は装飾として薄く塗られただけで、飛行には関係ない。彼の翼は理にかなっており、風を捉えるとふわりと空へ舞い上がった。観衆は驚嘆し、まるで人間が鳥になったかのように歓声を上げた。
もうひとりは、無知で短絡的な若者だった。彼は「蝋で羽根を固めれば飛べるだろう」と、羽根を翼型に成形して背負い、崖へ駆け出した。結果は言うまでもない。翼は重く脆く、飛ぶどころか空中分解し、海に落ちた。観衆は笑い、彼の愚かさを語り草にした。
その後も多くの若者が挑戦し、成功も失敗も入り混じった。だが祭りが終わり、話が代々伝えられるうちに、成功した者も失敗した者もすべてがひとりの若者に統合された。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2025/9/21 0:51
虹色のシャボン玉
適当に楽しくやってます!!
作品のサムネは全てAI生成によるものです