惰性以上、情熱以下 ⑮(完結)
諦める事には、慣れている。
昨日、病院からアパートまで私達は一言も話さなかった。ちょうど帰宅ラッシュの時間で、人通りの多い路地を手も繋がず自分の後ろを歩く私を彼は振り返りながら歩き、人だかりのできる横断歩道では、いつものように私の肩を抱き自分に引き寄せ、人の群れがなくなると、また私から手を離した。
アパートに着くと、鍵を開けた彼は私の背中に手を当てて中に入るように促し、自分は私が靴を脱ぎ終わるのを待って中に入った。
目に映るのは、開きっぱなしのクローゼットと干しっぱなしの洗濯物と干さず終いが入った洗濯カゴ。彼は、バスタブの蛇口を捻って布団を敷きにロフトに上がった。
暖房のスイッチを入れて上着を脱ごうとした時、私は無意識に冷蔵庫に視線が行った。そして、飲み物を出すフリをして冷蔵庫を開いた。
オムライスは、入っていなかった。
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2024/1/31 20:17
最終編集日時: 2024/2/2 16:05
DORRY
思いつきのストーリーを書いています。記録用でもあります。
恋愛、BL、家族、友情、テーマはいろいろです。