さよならみのたうろす

さよならみのたうろす
アステリオスという名前があるが、この暗い場所で呼ぶ者はいない。恐怖をこめて牛首怪物__ミノタウロス__と呼ばれていることを知った。  そう叫んだ若者は迷宮の中で逃げ惑い、階段で足を踏み外し首の骨を折って死んでしまった。そのままにしておいては迷宮に住み着いた野獣が食い荒らしてしまうので土の下に埋めてやった。  飢えて衰弱して死んだ者も埋めてやった。出口を教えてやりたかったがアステリオスもその出口が分からなかった。  牛は肉など喰らわない。人がそれを知らないはずはないのに、迷宮の牛首怪物が汚れない若者を喰らうという噂が世には流れているらしかった。  そもそも父が神との約束を破り、代償に母が狂わされて白牛と交わり自分が生まれた。母と自分に何の罪があるのだろうか。父に嫁ぎ父の過ちを咎めなかった事が母の罪なのだろうか?生まれてしまった自分は罪の象徴でしかない。どうすれば自らが犯してはいない罪をあながえるというのか。  誰もその方法を教えてはくれなかった。
小目出鯛太郎
小目出鯛太郎
『アルファポリス』『小説家になろうムーンライトノベル』にBL書き散らかしてる。 あらすじと感想文と片付けが苦手な生物です。