とこしえの待宵影。

とこしえの待宵影。
「ふわぁ……」  大きくあくびをしながら両腕を伸ばす。冷たい水で顔を洗い、ふかふかのタオルにうずまると雲の上にいるみたいで気持ちがいい。それから、ぼさぼさになった髪をブラシで整え、服を着替える。これが私の朝のルーティンだ。 「あっ、咲いてる!」  先日、庭で摘んできたときはまだ蕾だった花が見事に咲いている。 「へぇ~、こんな色をしてたのね」  小さくて可愛らしい花弁は雪のように真っ白だ。この城に飾ってあるのは薔薇などの派手な花ばかりだが、私はこういう控えめで可憐な花も嫌いではない。人間界で暮らしていたときは気にも留めなかった花たちであるが、こうして花開いた姿を目にすると久々の再会のように嬉しく思うものだ。 「折角だからヴィユノークにも見せてあげましょ。ふふっ、きっと喜んでくれるわ」  三人の中でも特に美しいものが好きな彼なら、興味を示してくれるに違いない。あまり見かけない花なら尚のことだ。 「ヴィユノーク、見て見て~! この花、綺麗でしょう?」  彼の部屋の扉を勢いよく開けると、彼の肩がビクッと跳ねた。
おもち
おもち
こちらでの寄り道は如何ですか?🍀🕊 ここに辿り着いてくれた貴方のお気に召すお話があれば幸いです✨ 短編小説サイトPrologueでも投稿しています📚