サカナ

サカナ
改札を抜けると、ブサイクな女が私を待っていた。 目は小さく唇は分厚い。そしてなぜだか、額と口元がもっこりと突き出ている。よくもまあこんなにブサイクな人間が出来上がるものだと感心してしまう。神様は片手間に彼女の顔面を造ったのだろう。よく見ると、ブスなりに化粧をしているではないか。ブスはブスなりに一丁前に世間の皆様から少しでも良く思われたいのだろう。そんなことを考えると、ブサイクとして生まれた彼女のことが気の毒でたまらなかった。私は心の中で少し泣いた。 「もう、ちょ〜待ったんですけど‪💢」 女はわざとらしく唇を尖らせる。私は小さい頃図鑑で見たナポレオンフィッシュのことを思い出した。 「ごめん、乗り換えミスっちゃって」 私は顔の前で手を合わせて、ナポレオンフィッシュの顔を覗き込んだ。 「別にいいけど、今度からは気をつけてね」 "今度"という言葉に引っかかる。このブスは、"今度"があると思っているのだろうか。ブスが調子に乗っていることを何よりも嫌う私は苛立ちを覚えた。 「わかった」
わ