忌み子

忌み子
竹之助 たけのすけ 彌夜子 みよこ 長   おさ           一八三二年、とある村に赤子が生まれた。赤子の目は赤かった。歯が生え揃っていた。それを見た産婆は、悲鳴を上げた。村では、数十年に一度、忌み子と呼ばれる赤子が生まれるそうだ。数年以内に、村には災いが来る。死人も行方知れずの者も出て、村は大騒ぎになる。そして、忌み子が生まれた家は村八分に合う。それを聞いた母は泣き、父は赤子を殺そうとした。父は赤子に熱湯をかけて殺そうとした。それを見つけた母は赤子を庇い顔、背中、腕に酷い火傷を負った。父は、逃げるように村から姿を消した。母は、赤子を1人で育てた。赤子は歯が生え揃っていたが、まだ乳しか飲めないため、母が乳をあげた。あげる時に噛まれてとても痛い。痛みのあまりに涙を流した。それでも、この子に欠かさず乳を与えた。普通の子のように可愛がり、愛情を注いだ。赤子は、それに応えるように普通の子と変わらない子に育った。その二年後、災いが起きた。村から次々と人が消えていった。母は、赤子が殺されることを恐れ、真夜中に赤子を抱え村から逃げ出した。逃げる途中、村人に刀や鎌で切られ、母の背中はボロボロだった。隣村に着くと同時に母は事切れた。それに気づいた、隣村の村人が眠っていた赤子を長の元へ連れて行った。村長は、この子が忌み子だということはすぐ気づいた。だが、殺すことは無かった。なぜなら、忌み子から悪い気を感じなかったから。きっと、愛情をしっかり注がれていたのだろうと思った。忌み子はその時から、村で育てられることになった。
幸川 萊
幸川 萊
さちがわ らい あなたに幸せが舞い降りてきますように。 不定期で掲載してます フォローよろしくお願いします 好きな作家 芥川龍之介、中原中也、与謝野晶子、知念実希人、東真直