時を渡るカフェ

雨粒が傘の上で弾ける音が、放課後の静かな商店街に響いた。 佐藤康之助はその音を、まるで遠くの別世界のリズムのように感じながら歩いていた。今日は何もやる気が起きず、授業中もノートに文字を殴り書きしただけで、心はどこか空虚だった。 「なんで、こんな気分になるんだろう……」 人々の笑い声や、車の走る音が、いつもより遠くに聞こえる。そんなとき、細い路地の奥に小さな看板が目に入った。白くかすれた文字で「カフェ・アマランス」とだけ書かれている。 「こんな店、前からあったかな……?」 好奇心と、言葉にできない胸のざわめきに押され、康之助は自然と足を向けた。ドアに手をかけると、微かに冷たい雨の空気が混ざる店内の香りが鼻をくすぐった。ベルが小さく鳴り、木の床に音が反響する。 店内は、外の雨の音が嘘のように静かだった。木製のテーブルと椅子、壁には年代物の絵画が並び、奥にはゆったりと時を刻む古い柱時計。窓際のランプの柔らかい光が、濡れた外とは異なる世界を作っていた。
なつめ
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