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その日はいつも通り朝から長玻(ながはわ)市立盛知(もろち)図書館の三階、学習スペースの一番奥の席に座り、講義で出された課題を終わらせていた。
お昼の時間になり、パソコンやノート等をカバンに詰め込み、一度外に出る。大きく背伸びをして歩き出す。向かっている方向は自宅のアパート。図書館のすぐ近くにある「照盛弥(てもろみ)荘」の一階右端が私の部屋だ。
長玻市自体が山奥の方にあり、照盛弥荘はそのもっと山奥の自然豊かな丘の上にある。何故そこに一人暮らしをしようと決めたのかというと、見晴らしが良くて長玻市を一望できる。そして、朝日夕日共に見えやすいから。
でも誠に残念ながら、後二年でこの照盛弥荘はなくなる。それは、入居者がここ三年増えないからだ。見晴らしも良くて自然も豊かで静かで過ごしやすい照盛弥荘がなぜ人気がないのか。それは皆分かっている。山の麓に少し大きいマンションが建てられたからだ。
それにより、毎朝楽しみにしていた朝日が見られなくなったのだ。少し悔しかったが、ここからは出たくない。でも、毎朝太陽を一番に浴びることが出来ないからなのか少し体内時計が狂ってしまった気がする。
「ただいまー。」
「おかえりなさい。ご飯食べに帰ってきたの?」
「はい、そうです。」
「さっき灰川さん達とグラタンを作ったんだけど、食べる?」
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カテゴリー: 恋愛・青春
投稿日時: 2023/3/18 12:59
春風 ゅぃ
ごめんなさい、ありがとうございました。