膨らむ

 一月一日、私は家で一人寂しく餅を焼いていた。焼いていた、といってもトースターで焼かれていく餅を眺めるだけだ。  餅は好きだ。同じ餅でも磯部餅、きなこ餅、お雑煮、たくさんの種類があるから食べていて飽きない。でも私は食べることより、餅が膨らんでいくのを見ることの方が好きだった。  子供の頃から膨らんだ餅の中には何が入っているのか気になってしょうがなかった。今思えば餅の中の空気が水分で膨張しただけなのだが、子供の頃はあの中にみんなの気持ちが入ってるのではと考え、母親にそのことを話していた。 なぜみんなの気持ちが入っているなんて考えたかはあまり覚えていないけど多分、新しい年を穏やかに迎えられたことへの感謝が入っていると思っていたのかななんて思っている。 でも、私はその考えがなぜかとても愛おしく思えて、幸せに思えて、ただ餅の膨らんでいくのを見ているだけなのに温かい気持ちになれた。 この気持ちも餅のなかにいれて私はぷっくりと膨らんだ餅を頬張った。
MOMO
MOMO