たとえそれが錯覚でしかなくても、

たとえそれが錯覚でしかなくても、
 甘い香りに誘われて、オレンジ色の小さな星を探している時のことでした。  一際強く芳る木の下で彼を見つけた瞬間、夢から覚めたような感覚がしたのです。まるで今までの全ての記憶が霧散するような、それでいて忘れていた思い出が蘇ってくるような。  たとえそれが錯覚でしかなくても、私には十分でした。
夜ヶ咲
夜ヶ咲
ファインダーの向こう側、ずっと君を探している。/140字小説とその下書き Twitter→ https://mobile.twitter.com/yorugasaki