【第10回N-1】   『あ』

村のはずれ、審問所の一室で、取調べ官のヴァルドレクが神妙に口を開いた。 「君がアルヴェリオ君で間違いないね? 今日来てもらったのは他でもない。 先月起こった、とある事件についてだ。 君なら、言わなくても分かるだろう?」 アルヴェリオは両方の手首を縛られたまま、その快活そうな見た目からはまず想像もつかないような、しゃがれた声で話しはじめた。 「あ、何です?『ある事件』って? 全く見当もつかないのですが。   」 「ふふん、まあ最初はそう言うだろうな。」 ヴァルドレクは、おもむろに口角を上げた。元々しわの入っていた顔に、更にしわが寄った。その一つ一つが、彼の取調べ官としての功績のしるしであった。
道徳的な山羊
道徳的な山羊
「後川」だった者です。17歳の若造です。「カクヨム」での投稿も始めました。 第七回N−1 12位  435点 第八回N-1 9位  318点 第九回N-1 8位  489点 King of Novelee vol.3 5位