赤とピンクの境界線

「……しっ、静かに」 彼の手が私の口元を覆い、漏れそうになった吐息を塞ぐ。 ご近所への配慮なんて建前で、本当は私の声を自分ひとりで独占したいだけなんじゃないか。そう思わせるほど、彼の瞳は暗く、熱く、私を射抜いている。 玄関のタイルに膝をつき、絡み合う指先。 左手薬指の指輪が、私の肌をなぞるたびに小さな音を立てる。 「……声、出すなよ。俺の音だけ聞いてろ」 窄めた喉の奥で、行き場のない熱が暴れる。 シーツの摩擦音すらない、ただ二人の肉体がぶつかり合う鈍い音と、重なる唇の隙間から漏れる湿った音だけが、狭い玄関に響き渡る。 彼は私の反応を一つも逃さないよう、眼鏡の奥の瞳でじっと見つめながら、さらに深く、容赦なく突き上げてくる。 「……っ、ここで全部は無理」
稟苺
稟苺
小説を書いています。 短編・恋愛・幻想ファンタジー中心。 読んでもらえたら嬉しいです🍓