春 ─episode 1─ 「遭遇」

 「おかあさーん!今日のご飯なーに?」 コトコトコト……グツグツ。 「今日は大好物の白シチューよ、今日のテスト苦手な科目だったけど頑張ったからね!ごほうびよ。」 声色からも伝わる「嬉しさ」を放つ母に駆け寄って抱きしめる。 そんな楽しそうで仲睦まじそうにしているわたしの名前は「春」。 50を過ぎた母と、2人暮らしをしている高校2年。 兄もいるのだけど私が生まれた2年後には勘当され、今はどこにいるのかさえわからない。 もしかしたら、私たちの手では届かない場所にいるのかもしれない。 いろんな可能性を推測する時間は毎日、毎日。 今日は目の前の「やさしさ」で作ったのか、それとも母もまた兄のことを思い出して作った憎悪と後悔が混じった"白濁"なのか。
ヴァラク
ヴァラク
[Embryo]連載中