星河灯台夜行譚 序章【星河灯台の霧】

星河灯台夜行譚   序章【星河灯台の霧】
星河(せいが)灯台夜行譚 序章 星河灯台の霧 昼と夜の境目がどちらつかずに迷っているような、紫色の時刻だった。街の北外れ、崖の上にぽつりと建つ古い灯台は、今日も灯らない。海から吹き上げる風は生温かく、湿った霧があたり一面をぼんやりとかすめていく。灯台の石壁は長い風雨に磨かれ、ゆっくりと海へと削られている。 その灯台の腰のあたりにある古い鉄扉の前で、ひとりの少年が座っていた。 制服の靴を脇に置き、彼は膝の上で古びた懐中時計を磨いていた。金色だったはずの外側は、長年の雨に晒されもうほとんど鈍い真鍮色へと変わっている。表面についた無数の擦り傷が薄暗い空を映しては消え、映しては揺れていた。
さやかオンザライス
さやかオンザライス
文学が好きです。浮かんだ物語をアウトプットしに来ました。荒削りですがよろしくお願いいたします👳🏻‍♂️