犬の気持ち その18

「さーくらがさいたー」  歌でいいのか、それ。メロディーとか何もない、間延びしたしゃべりなんだが。  季節は、すっかりと移り変わり、春になった。青が、謎のリズムで話したように桜も咲いている。 「桜か……。見に行ってもいいんやが、今日は日曜日。確実に混んでいるやろうし、やめとこか」  俺は、分かっているぞ。そうやってテキトーに理由をつけて、桜を見に行かないで春が終わるんだろうな。 「ぽちは、桜見たいか?」  どっちでもいい。特に興味があるわけでもないしな。 「まぁ、ぽちは花より団子やろうしな。桜より食いもんやろ」  否定できないのが腹立つな。青も同じ思考回路だろうに。 「そう言えば、昨日の夕方、親戚からなんか届いてたな……。確か食べ物だったはずや。この散歩が終わったら、一緒に食べような」
きと
きと
就労移行支援を経て、4度目の労働に従事するおじさんです。 あまり投稿は多くないかも知れませんが、よろしくお願いします。 カクヨム、エブリスタでも小説を投稿しています。