かけ引き上手な君

かけ引き上手な君
第一章:今日もまた、君の人生を生きてみた  秋元悠真、28歳。  都内の中堅企業で事務職をしている。派手な経歴はない。目立った実績もない。髪型は無難、スーツは吊るし、話しかけられたら笑ってごまかす。そんな、“会社にいてもいなくても同じ”と陰口を叩かれてそうな男だ。  そんな悠真には、ある誰にも言えない趣味があった。  ――女子大生になりきって、人生を妄想すること。  たとえば今朝も、通勤電車の中で“彼女”を見つけた瞬間、スイッチが入った。
あさきのぞみ
あさきのぞみ
世界観なんてない。 自分らしく生きる羅針盤すらない。 存在を証明する計算式もない 指折り数えること その日を繰り返す為に