命奪う前に、心奪いました
その女は、真っ直ぐ俺を見上げた。
「……お前、今自分が置かれてる状況、分かってるのか」
あまりに真っ直ぐで、あまりに感情の読めない瞳で見上げて来るので、俺は半ば不安になってそう問い掛けた。
俺の右手には、拳銃が一丁。
銃口は女の額ゼロ距離。
だが彼女は、一秒後には確実に殺されるという状況下にあって、眉一つ動かさない。
「分かってますよ。でも、殺さないでと言えば、銃を下ろしてくれるんですか?」
冷えた口調で返って来た答えは、予想すらしていなかった言葉。
ーー殺し屋、なんて残忍な稼業をやり始めて随分経つけれど、銃を突き付けられて命乞いをしない奴も、泣いて許しを乞わない奴も、初めてだ。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2022/2/24 14:53
和菜
「小説家になろう」で小説を書いてます。
誰かの目に止まったらいいなぁ……