聖羊

聖羊
 ボコボコと奇妙な音が私に朝を伝える。 「おはよう、クルベット。朝食にしましょう」 「ありがとう、おばさん」  おばさんは、沸かしたお湯をカップに注ぐ。即席のスープだが、私はこの味を気に入っている。  幼い頃に母を亡くした私は、出身地であるアナカル区の民によって養われた。父は仕事が忙しいらしく、私に顔を合わせるのは数年に一度だ。これじゃあ、顔を見るのが人生で数えられるほどしかなさそうだ。それに、成長期の人間は、顔の骨格の変化にともなって顔つきが変わることもあるそうだから、父が私に会う度に顔を覚えているのかすら疑問ではある。 「クルベット、一人暮らしをするんだって?」 「もう私も子供じゃない年齢だ。いつまでも皆に面倒を見させるわけにはいかないし、両親にも安心させてやらないと」 「あら、立派になったもんだね」  私は得意げな顔をしてスープを口に運んだが、うっかり冷ますことを忘れて、結局顔にシワを作ってしまった。  既に隣町のクリフト区に新居を決めている。隣町といっても、徒歩では体に堪える距離ではあるから、おばさんには一生のお願いだと言って、馬車を出してもらうことになっている。さほど荷物は積むことはできないが、生活に必要なもののほとんどはクリフト区で調達しようと思っているから、問題ないだろう。
いに 水曜
いに 水曜
水曜に何かを載せます。理由はありません。