故に、疫病神

故に、疫病神
三好の父親と、旅に出たのは、そういうことではなかったーー。 「お袋の世話なんか、到底無理だ」 「……それで、おれにやれって言うのかよ」 お袋の頭が弾け飛んだのは、中学に上がる前のことだった。夏も盛りにきては、渋く辿る。近頃じゃ、左足が痛んだ。思い起こせば、お袋は。言葉も憚られる、揺らぎが。繰り返し、眠気があって。そのまま、惑わされた心を傾けていた。 そう、最初は、単純だった。やれ、親戚誰それが亡くなったと嘘を吐いては、徘徊して。やたらと、電話を掛けてくる程度と。公務員だった親父はそいつを上手く受け入れられず、ひた隠し。水を差すことも言えぬまま、お袋は悪くなった。いつから、そんなに頭の中、しっちゃっかめっちゃにしたか。そのうち、おれの方が足首から崩れ落ちる気分を招いて。思春期のそれは、ダチすら呼べない家の中。冷蔵庫の中に積み重なった、味噌。とくに、兄貴の具合は雑巾を絞るように悪かった。 「なに言われてたか、知ってるだろ」 「みんな、お袋に言われてただろ」 罵られたとは、形作らなかった。それも、親父が棺桶に収まる前までか。具体的なことは、滲んだ汗ともに、降って。排水溝の底、へばりついた髪。そいつをシャワーのなか、眺める。静かに、頬が冷えてゆくのを感じた。 「とにかく、施設に」
西崎 静
西崎 静
コツコツ書いていきたいと思っております。よろしくお願いします!成済