快楽のファシズム−逮捕−

快楽のファシズム−逮捕−
第一章 逮捕 「58室、番号!」  施錠された分厚い鉄扉の小窓から、偉そうな刑務官が佐久間を睨みつけた。  佐久間は刑務官の態度に動じる事無く、夕食後の点検は普段と変わらない低い声で返答した。 「1038番」  東京拘置所D棟6階の独居房、58室に自分の声が微かに響いた。  事件は2020年12月28日の事だった。 いつものように覚醒剤密売の仕事を終えた佐久間だったが、この日はいつもより疲れが溜まっていた。
中山大二
中山大二
フィクションでもノンフィクションでも 体験したこと妄想したこと面白いこと 全てを文字でアウトプットしていきます