負の連鎖

 優しかったあいつはやはり己の優しさのせいで死んだ。 困っている人を見殺しに出来ないと言って大荷物を持ったご老体がそこにいれば駆けつけて荷物を持ってやったりしていたし、転んで膝を擦りむいた子供がいれば治癒魔法を使って治してやったりしていた。  なんでそんな無意味なことをするんだ?と俺が聞けばあいつは無意味なんかじゃないと少しだけ憤慨したように俺に言った。 『優しさが伝われば優しさが返ってくる!だから私は困ってる人がいたら助けたいんだ!』 偽善者の言い分に反吐が出そうになった。 どうせ、俺達が何をしてやったところで俺達は化け物であいつらは俺達を迫害するだけだというのに。意味がわからなかった。  『大丈夫!いつかルカにも分かる時が来るさ!』 そう笑顔で言ったアイツだったが、結局人間達は俺達を化け物として扱った。 ただただ人よりも長生きで、魔術なんていう物が使えるだけだというのに人間は魔族だ何だのといって俺達を殺しにかかってきた。  殺しにかかってきた人間の中にはアイツが助けてやっていた人間の姿もあって、やはりアイツが行ってきた事は無意味だったんだと思うと何故か胸の奥が痛かった。
ナナシ
今日も静かに生きてます。 prologue様にも出没し、極々たまに小説を投稿してます。