タケウチは立ち上がる

「救世主……」  呟いたのはカンテラだ。 「貴方の瞳には淀みがない。いつも分け隔てなく事実を観測し、正しい判断と知恵を授けて下さった。詳しく聞かせて下さいませんか」  厳かに、そして敬意を払った問いを口にしながら、カンテラは吟遊詩人の側へ歩み寄った。 [過去の遺物を呼び起こせるのは、私と彼だけなのだ。しかし彼ならば、私よりも多くのものを復活させられるだろう] 「なにか根拠があるのですね」  タケウチとライーロは息を潜め、会話する二人を見つめている。 [彼は私と同じ世代を生きている。スーツと船を一眼見て確信した。故に救世主たり得るのだ]  吟遊詩人は杖の先を瓦礫の山へ向けたあと、再びタケウチの方へと動かした。 「具体的には、どういう……?」
アバディーン・アンガス@創作アカ
ローファンタジーや一風変わった雰囲気の作品が大好物。 主にダークファンタジーとかサイバーパンクとか、好きな要素をごった煮した作品を鋭意執筆中です。 「好きじゃないけど面白い」と言われる作品を目指しています。 合間に書いた短編を気ままに投稿していく予定です。