第1話 憎い相手はいませんか?
私は信藤 望愛(しんどう みらい)16歳の高校一年生だ。高校に入学してから半年近く経っていた。桜の木は赤や橙を彩る紅葉となり、すっかり景色は秋になっていた。そんな美しい道を友達みんなで通って学校へ向かう…と言いたいところだが、それはただの理想。今私は部屋に引きこもり、パソコンとスマホを眺めているだけのクズで不登校の生徒。どうしてこうなってしまったのだろう。私は何か傷つくような酷いことを“あの子達”にしてしまったのだろうか。
私は高校に入学してからなかなか馴染めず、同中の友達もいなかった。そんな日々を一ヶ月程過ごしていると、目つきが悪いだとか、何も喋らない、無口だとか私に対する悪口が始まった。だんだん言葉だけではおさまらず、水をかけられたり、上履きには画鋲が置いてあったり、嫌がらせはどんどん大きくなって気づいたら学校が怖くなっていた。どれもこれも漫画のような古いいじめだが、それでも私の心は切り裂かれていた。最初は私を庇ってくれる子もいたが、主犯格の子の親はこの学校へ多額の寄付をしているだとかで、最後はみんなアイツに跪く。先生すらも見て見ぬフリをし、みんなアイツのご機嫌取り。
まあ今となってはあんな世界どーだっていい。私はゲームの世界で輝く。今じゃ〇〇サバイバルでは世界ランキング4位までたどり着いた。私とマッチングすればみんな驚き私に慕う。優越感に浸り、溺れ、硬い液晶画面の中へと吸い込まれて、吸収されていく。そんな毎日を繰り返していた。
ある日、私は学校のことを思い出してしまった。アレを思い出すと心の奥底からイガイガして、お腹の中が焼かれているように熱く、酷い耳鳴りと強烈な頭痛に襲われる。これは月に一度の頻度で起こるようになった。いつもは別なことに集中すれば収まるのだが、今日に限ってそうはいかなかった。対処法を調べうと思いパソコンの画面を開いた。するとパスワードのロック画面よりも先にある文字が表示された。真っ黒の画面に真っ白い文字で一言
「殺したいほど憎い相手はいませんか?」
と。私は驚き、ウィルスにでも感染したのだろうかと焦る。すると今度は
「もしもいるのであればこちらのサイトをクリックしてみてください」
と急に切り替わった。文字の下には
“賞金は7億円”
と文字の載せられたURLが表示されていた。いかにも詐欺のような文章だが、アレを思い出していた私は正気とは言い難い状況だった。学校でのことが頭の中に流れてくる。息はゼェハァと荒く上がっていた。アイツとアイツを囲むクラスの奴ら、助けてくれない担任、全てが頭をよぎり、次に目を開いた時にはURLをクリックしていて、パソコンは何やらルールのような画面に写り変わっていた。
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カテゴリー: その他
投稿日時: 2022/3/9 2:27
最終編集日時: 2022/3/9 2:29
注意: この小説には性的または暴力的な表現が含まれています
くれぴぃ
小説を作るのは初めてです。週に1〜2回ぐらいのペースで投稿します。基本連載の物語を投稿しますが、たまに読み切りも書きます。
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